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第1話 目覚め
「由姫・・・、由姫・・・。」
(う~ん、お母さん?)
暗闇に堕ちていった意識がだんだんと覚醒してくると、次第に記憶が甦ってきた。
(あれ、一体何が。確か下校していた筈なのに。)
目を開けると目の前には母親が涙を浮かべながら抱き付いてきた。
「良かった、由姫。目が覚めたのね。お母さん心配したのよ。」
突然のことに驚きながらも何が起きたのかを思い出し、身体を確認するために両手で自分の身体を調べる。
突然の動作に驚いた母親は話し掛けてきた。
「どうしたの由姫?」
さっきからの母の自分を呼ぶ名が妹のものだったと違和感に気付き言葉を発する。
「母さん、俺通り魔にナイフで刺されたはずなのにどうして無傷なんだ? と言うかさっきから由姫って何だよ。俺の名は勇樹だろ? いくら似ているからって親が間違えるなよ。」
勇樹が母にそう告げるとまるで時間が止まったように言葉に詰まる母。
なにかおかしいと思いながらも、一番気にかかっていたことを質問する。
「ところで由姫は大丈夫なのか? 今何処にいるんだよ。母さん知ってる?」
止まっていた時間が動き出すように母が話し掛けてきた。
「何を言っているの? 由姫は貴女でしょう?」
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