第2話 帰宅

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第2話 帰宅

 眠りから覚めた勇樹は、今までの事が夢ではないかと少し期待をしていたが、鏡に写った自分を見ると深いため息をついた。 (はぁ~、やっぱり夢じゃなかったか。)  取り敢えず今日は精密検査の最終日で、何も問題がなければ明日には退院の運びとなる。  入院生活はあまりボロが出ないよう部屋に引きこもるように過ごしていたため、退屈な時間が流れていた。 (ああ、早く家に帰ってDVD観たりゲームがしたい。)  中学生には流石に病院生活は酷なようであった。 コンコン。  病室の扉がノックされ勇樹がどうぞと言うと、女性の看護師さんが入ってきた。 「おはよう、由姫ちゃん。身体の調子はどう?」 「お早うございます、愛美さん。身体のほうは問題ないです。」 (むしろ、心のほうに問題があります。なんて言えないよな。)  彼女の名前は清水愛美(しみずまなみ)、この病院で看護師をしていて由姫の担当を受け持っていた。 「そう、良かったわ。今まで検査ばかりで退屈だったでしょう? 今日が無事に済めば晴れて退院できるわね。」 「はい!愛美さんに会えなくなるのは寂しいですけど。今までお世話になりました。」  勇樹の言葉に微笑みながら愛美は答えた。     
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