【第一章】引き寄せる運命

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 吹雪ふぶきが荒れ振う12月の深夜に、満月の引力に引かれたのか、この寒い国のデンマークの町トゥナーに赤子が生まれた。  「・・・・・」  外の吹雪が激しく、突然窓が開き、風が雪と共に部屋へと入り込んだ。赤子が生まれる時に必死で看病する使用人たちは、慌てふためいていた。なぜなら、生まれた赤子は取り出されて、そのへその緒を切っても、まったく泣かずに息をしていなかったからだ。ざわめくように開いた窓を必死で閉めようとするが、なかなか閉しめる事が出来ず、苦労していると、外に白い物が横切ったと思った瞬間しゅんかん、吹雪が少しおさまった。  産婆さんばは、赤子の両足を片手でもち、赤子を逆さに宙吊ちゅうずりにした後、強くお尻を叩いたが、まったく反応がなかった。すると赤子の周りが白い冷気のような膜まくに包まれその膜まくが、赤子の口から吸引きゅうしゅうされたかのように入っていくと、急に赤子が泣きだした。 「ぅおぎゃぁーぁあー」  産婆は落ち着いて、お湯と清潔せいけつな布で赤子のすわってない首をしっかりと慣れた手つきで持ち、体を綺麗に洗いおとす。そこへ、上着を脱ぎ捨て綺麗な成り立ちの若い落ち着いた風貌ふうぼうの男爵だんしゃくが、産まれたばかりの我が子を少し強引で、雑ざつに産婆さんばから赤子を取り、胸へと抱きしめた。  「お前の名前はもう決まっているぞ。名前はラースだ」  ここに12月ラースが誕生したのでした。  それから5時間経ち、二人目の男の子が産婆に抱きかかえられた。その男の子の名前は、ニコラスと名付けられた。双子だったのです。
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