21章 親善大使の公務(前編)

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「──……ん…」 何処か遠くから電子音が小刻みに聞こえてくる。 愛美はゆっくりと目を開けた。 うっすらと見えた視界の先に、手入れの行き届いた蜂蜜色の美しい褐色の肌が現れる── 「──…っ…」 愛美は瞼を大きく開いた。 「目が覚めたか…疲れてるならまだ眠っててもいい」 眠り込んだ愛美の寝顔を眺めていたザイードは、柔らかく微笑むと愛美の頬を優しく撫でていた。 その大きな肩の向こうでは未だに愛美の携帯電話のアラームが鳴っている。 昨夜、玄関で雪崩れ込むように激しい情事に耽ったせいか、愛美の鞄はそこに転がるように放置されたままだった。 「あっ…」 起き上がりベッドから出ようとした愛美の腕をザイードは急に引き寄せた。 足元を崩して愛美はザイードの腕の中に倒れ込む。 「俺よりもあれが気になるか」 「……え…」 抱き締めて顔を覗き込まれながら言われた台詞に愛美は思わず驚いていた。 初めて目にしたザイードの少し甘えたような表情── 愛美は大いに戸惑いながら口を開く。 「あ…鳴りっぱなしだと、充電が切れ…ちゃう…」 そう答えた愛美の言葉にザイードはああ、と小さく納得したように声を漏らした。
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