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アデルはふんと鼻を鳴らす。
「俺は常に我が、儘だ──…やりたいようにやる」
「きゃっ!?」
「なっ…」
そう言いきったアデルは咄嗟に愛美をザイードの腕から浚い返した。
囲うように抱き締めてアデルはザイードに意味深な笑みを向けている。
「マナミは実に良い肌をしている……お前が狂うのも多少は頷けるぞザイード」
「───…っ」
その言葉にザイードとアサドの目が見開いた。
不敵に笑うその顔は目の前にいる兄弟二人の反応さえも楽しんでいるようだ。
そんなアデルからザイードはムキになって愛美をまた奪い返していた。
「おお怖いな。我が弟ながら身震いがくるぞ」
愛美をパッと離して解放し、アデルはからかうように棒読みの台詞を口にする。
アサドは完全にザイードで遊び始めたアデルの肩を引っ張った。
「これ以上ザイードの気分を荒立てるな! たくっ…」
今から親善大使という笑顔が大事な役割をこなさなければならないのに……
アサドは前を歩きながらボヤいた。
「ほんっとに我が、儘な奴だな? お前が王位継承権放棄してくれて国は命拾いしたもんだ」
その言葉に相変わらずふんと鼻を鳴らしてアデルは返す。アサドは後ろにいた二人に声を掛けた。
「マナミ、会場に着くまでそいつのご機嫌をとっておいてくれ!」
愛美はえっと返して後ろから抱き締めていたザイードを振り返った。
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