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生肌をアデルに撫でられる生々しい愛美の姿が頭に浮かぶ。
昨夜自分がじっくりと愛撫した愛美の白く波打つ滑らかな腹部──
その感触はいつ思い出しても喉に唾液が溢れる程に淫靡で魅惑的だ。
「その先は…っ…」
ザイードは一度、奥歯を噛み締めると苦し気にそう尋ねた。
愛美はゆっくりと首を横に振る。
「あとはターミルから電話がきて…それから逃げ回ってて何も…」
小さな声でポツリポツリと口にする。
ザイードは自分を落ち着かせるように、はあーっと細長い息を吐いていた。
胸に踞る愛美の後頭部を包み込むようにザイードはやさしく撫でる。
聞いて腹は立つが知らなきゃもっと不安になる。
ザイードは愛美を抱き締める腕にぎゅっと力を込めてから愛美を覗き込んでいた。
「アデルにはもう近付くな……」
そう言っておでこに唇を落とす。
「行こう、アサドに怒やされる」
手を握ってまた歩き出す。
今度はそう早くはない。愛美に歩調を合わせるとザイードは軽い急ぎ足で前を進んだ。
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