21章 親善大使の公務(前編)

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・ 「マナミにどこまで触った…あ?…答えようによっちゃご自慢の顔が見る影無くなると思え…」 無表情の中に怒りが静かにたぎっている。ドスの効いた声音は軍の隊をシゴク時に使われる音だ。 そんなアサドを前にしてアデルは痛みを堪える顔を浮かべながら鼻で返す。 「やはり必死じゃないか──」 「───…」 「弟のものだといいながら己が手出し出来ないからとわたしに当たられても困るな──…あ、違うか兄上」 「……っ…」 腹部の痛みに冷や汗を浮かべながらもアデルの嫌味な笑みにアサドの眉間にはシワが寄る。 「稀に見るしっとりとした良い肌をしてたぞマナミは──」 「──…っ…」 ニヤリとして言ったアデルの言葉にアサドはカッとした表情を向けた。 「肌を重ねたらそれは夢心地な気分になれるだろうな──…どうだ、欲しくなったか」 くくっと含み笑うアデルにアサドは眉間を険しく寄せる。掴んでいたアデルの襟ぐりを乱暴に手離すとアサドは強く舌を打った。 何をやっても喰えない男だ── アサドはアデルに背中を向けてフロントに着いたエレベーターから外に出た。 アデルは崩れた襟元を整えながら殴られた腹に手を添える。 「……っ…バカ力が…あれではまだ仕返し足りんっ」 前を行くアサドの背中を妬ましげに睨み、アデルはそう呟いていた。
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