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ザイードは愛美を離して自分がベッドから這い上がる。
愛美はザイードのその行動にビックリした顔を向けていた。
「どうした? 早くしないと切れるんだろう?」
玄関から持ってきたバックをザイードは目の前に差し出しながら言った。
いざという時に使えないのでは携帯する意味がない。ザイードは城の食堂でターミルに電源切れが理由で電話を貸して貰えなかった腹立たしさを記憶の隅に思い出していた。
程よく鍛えられた全裸を惜し気もなくひけらかしバックを手にするザイードを見つめながら違和感が拭えない。
王子様が人のためにバックを取りに行くなんて…
暴君主義に見えていたそんなザイードの行いに愛美は慣れず、中々バックを受け取ることが出来なかった。
「マナミ?」
「え!、あ…ありがとっ…ございます……」
つい敬語になってしまう。ザイードはそんな愛美を笑いながらまたベッドに潜り愛美に身を寄せて抱き締めていた。
なんか違う──
久し振りに逢ったからだろうか……
この人って…
こんなに優しかった?
頭はそっちの考えでぐるぐるなってくる。
愛美は無意識で携帯電話を操作してアラームを止めていた。
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