21章 親善大使の公務(前編)

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・ アラームの止まった電話を閉じるとザイードは愛美の手を取りそのまま携帯を眺める。 「どうしたの?」 「俺だけ持ってない……」 「携帯電話を?」 ザイードは無言で頷いた。 愛美はそんなザイードを見つめて思わずぷっと笑う。 「何がおかしい?」 「おかしいってわけじゃないけど……電話欲しいの?」 「………」 ザイードは愛美を見つめて真面目に頷いて見せた。 人が持っている物を欲しがるところが何だか子供のようだ。ザイードは愛美の携帯電話に付いていたストラップを摘まんで眺めている。 ザビアで買ったサボテンのキーホルダー。それを縦横にしながら見る仕草が何とも言えなかった。 「向こうに帰ったら手に入れる──…」 何やら決心した表情が伺える。愛美はまたもぷっと笑っていた。 何だか不思議な感じがする── この人とこんなに普通の会話が出来るなんて……。 これも日本という自分の国に居るせいだからだろうか── 愛美はそう思いながらサボテンで遊ぶザイードを見つめていた。 「何をそんなに笑って見ている」 「──…笑ってたかな」 「ああ、すごい笑ってる」 ザイードは言いながら愛美の頬を撫でて自分も笑みを返した。
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