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愛美はそんなザイードの手を上から包むように自分の手を重ねてザイードの大きな手のひらの感触を味わいながら頬に押し当てる。
「すごく幸せな気持ちがする……だから勝手に笑っちゃうんだと思う…」
「──……」
そう言って目を閉じて想いに浸る愛美を見つめたザイードの瞳が一瞬で嬉しそうに潤んだ。
「親は……どこにいる」
「……ん?」
「マナミの両親に会いたい──…」
「………」
手のひらを頬に当てたまま親指が愛美の唇を優しくなぞる。そんなザイードの口から出た言葉に愛美はゆっくりと目を見開いていた。
「マナミを妃にするなら挨拶に行かなきゃならない──…今日にでも行きたい、会わせてくれ」
「きょっ…今日っ!?」
愛美は慌てて聞き返した。
「ああ、なるべくなら今日──…会うだけでもいい、妃にすることだけは先に伝えたい──」
「………っ…」
「結婚はまだ後になる、向こうは色々と仕来たりもあるから時間が掛かる」
「───…」
愛美はザイードの言葉を聞きながらひしひしと現実味が沸いてきていた。
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