21章 親善大使の公務(前編)

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 ずっと一緒に居るってそういうことだ…… プロポーズされただけで何だか浮かれてた。 異国の王子様のお妃に── 結婚するってそういうことなんだ……っ 「……っ…」 愛美は密かに焦りを浮かべ、自分の口を手で塞ぐ。 なんて言おう こんな時って親に何ていうの!? 愛美は頭を抱え次第に蒼ざめる。 ザイードはマナミのその動揺する姿に不安を覚えていた。 「異国の者だと反対されるか?」 愛美の肩を掴み顔を覗いて問い掛ける。 愛美はゆっくりと頭を横にふった。 「わ、……わからないっ…」 「わからない?……」 頷く愛美にザイードは眉を寄せた。 愛美の表情は変わらぬままだ。 わからないっていうか── 多分…… 腰抜かすかもっ… 真面目で堅物な父親にのほほんとした天然な母親。 下に高校生の弟と上には出戻りバツイチの姉が一人── 長女が自由奔放過ぎたせいか自分自身、極端に平凡地味な学生時代を送ってきている。 高校の時にも男っ気何てまるきりなかった── そんな娘が異国の王子様を連れてきて結婚します! は…… 「………何を考えてそんな顔をする…」 「───…」 ザイードは愛美の表情を見て不安が押し寄せていた。 「あっ!?…やっ…」 ザイードは急に愛美の肩を押してベッドに倒した。 驚いて一瞬抵抗仕掛けた愛美の腕を枕の両脇に抑え込む。 目の前には少し怒った顔のザイードが見えていた。
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