21章 親善大使の公務(前編)

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・ 「あ……あのっ…」 「失敗したな」 「え……」 「しっかりと言葉で返事を聞いておくべきだった──」 真剣な瞳が真っ直ぐに愛美を見下ろしていた。 なんだか有無を言わせない雰囲気が漂う…… ザイードは愛美の上に跨がったまま、押し倒した愛美の腕を今度はぐっと引っ張り愛美を起こす。 座った愛美と向き合うとザイードは掴んでいた愛美の両手を自分の手で包み込んでいた。 軽く握った愛美の指先にザイードはキスをする。 そして顔を離してその手を眺めた── 「指輪はどうした──」 「……っ…あ、バックに」 愛美はそういってバックを漁る。そしてシースルーの布に巻いた指輪を取り出して見せた。 ザイードは指輪よりもその布に目を見張っていた。 「──…これも持ち歩いているのか…」 ザイードは指輪を巻いていた布を手にした。 見開いていた瞳がゆっくりと緩んでいく── そしてその布を広げるとザイードは愛美の頭にそれをふわりと被せた。 「我が国の慣わしを知っているか?」 愛美は尋ねられて首を横に振った。 ザイードはそんな愛美を見て優しく微笑む。
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