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「あ……あのっ…」
「失敗したな」
「え……」
「しっかりと言葉で返事を聞いておくべきだった──」
真剣な瞳が真っ直ぐに愛美を見下ろしていた。
なんだか有無を言わせない雰囲気が漂う……
ザイードは愛美の上に跨がったまま、押し倒した愛美の腕を今度はぐっと引っ張り愛美を起こす。
座った愛美と向き合うとザイードは掴んでいた愛美の両手を自分の手で包み込んでいた。
軽く握った愛美の指先にザイードはキスをする。
そして顔を離してその手を眺めた──
「指輪はどうした──」
「……っ…あ、バックに」
愛美はそういってバックを漁る。そしてシースルーの布に巻いた指輪を取り出して見せた。
ザイードは指輪よりもその布に目を見張っていた。
「──…これも持ち歩いているのか…」
ザイードは指輪を巻いていた布を手にした。
見開いていた瞳がゆっくりと緩んでいく──
そしてその布を広げるとザイードは愛美の頭にそれをふわりと被せた。
「我が国の慣わしを知っているか?」
愛美は尋ねられて首を横に振った。
ザイードはそんな愛美を見て優しく微笑む。
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