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「知らずに持っていたか……」
甘いため息を吐きながらザイードは嬉しそうに愛美を見つめていた。
「ならばやはりカダルだな……」
「カダル……?」
「ああ」
ザイードは頷きながら愛美の指先を取り唇を押し当てた。
そしてゆっくりとそこから顔を上げる。
「ファジュルでは男がプロポーズする時、花嫁となる相手に身に付ける物を先に贈る習わしがある──」
「………」
ザイードは優しい声音で言いながら愛美の顔を覆うシースルーのベールをゆっくりと捲っていく──
目元を隠す淡い紫色の布を後ろに退かし、ザイードは露になった愛美の額に口付けを落として言葉を続けた。
「……次に逢うときに男が贈った物を身に付ける──…そうして花嫁となる女が待っていたならそれがプロポーズの答えだ……」
「───…」
ザイードはふっと微笑みながら愛美の口元を覆う濃い紫色の布を外して避けていた。
「でも言葉でちゃんと確認したい……」
「……っ…」
「聞かせてくれ──…」
愛美はザイードの真っ直ぐな瞳に見つめられ、頬をほんのりと赤くする。
照れて少し俯いた愛美の顔を両手で包むとザイードはもう一度はっきりと口にした。
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