3.X、Y、Z

3/11
前へ
/59ページ
次へ
 転送装置の台座に、一瞬、稲妻が走った。眩しさにネロが目を瞑り、再び開いた時には虎子達は消えた。転送に関して危険がないことは、作者である星村を信じるしかない。 「さてと、あとは彼女達に任せて、私は私の仕事をするかな」  虎子達を送り届けたP博士は重い腰を上げると、年寄り臭く腰を叩いて研究所に引き返した。ネロはP博士の後ろ姿を黙って見届けながら、タバスコのストックがまだ残っているのを確認する。  怪しい転送装置は正常に作動していた。なにを持って、正常というべきかおかしな話であるが、従来の目的である転送というのはどうやら、成功したらしく、予定通り虎子達、三人は別々の場所に送り込まれた。 「本当に、あの男は何を考えているのかしら?」  虎子は作家という生き物がどういう考えでいるのか、理解に苦しんだ。虎子も人並みに作品をつくることはできる。ただそれは、平均的な内容で飛び抜けた賞をもらえない。そもそも、彼女は戦闘を目的とした生体兵器だったので、娯楽に関する感性は持ち合わせていなかった。虎子自身、娯楽を生み出せないことに、さほど不便を感じたことはなかった。故に、それを自由に生み出せる存在というのは理解し難い、異質な存在に思えてしまう。  虎子は改めて自分が送られた場所を見ると複雑な表情を浮かべた。  そこは、どこかの惑星らしい。地球ではない。見たことない天体が空に浮かんでいた。恐らく、星村が作った作品の舞台になっている惑星なのだろう。ここは作品の中でもSFに焦点をおいたフィルムらしく、謎の言語を使っている宇宙人の姿が時々、見えている。ここに、P博士が言っていた、Y氏、X氏、Z氏の誰かがいるのだろうか。 「地鍵、解錠」  虎子は念の為、地鍵を解錠しシャベルに変えた。幸いにも、ここには大地があり魔力を供給するには困らない。反面、これだけ広いと、どこに相手がいるのか分からない。探すだすだけでも、一苦労だった。  そして、そんな虎子の行く手を阻むようにして地面から姿を現す者がいた。泥人形のように形は定まらず今にも崩れそうな姿。 「どうやら、こいつらを倒しながら進むしかないみたいね」
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加