3.X、Y、Z

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「私はネロ様とのデートを楽しみたいだけなのに」  このまま、普通に屋上を走っていっても、追っ手は続くだろう。キャロンはその場で踏み込む。同時に足元を爆破し自らを砲弾として打ち上げた。その際、建物を壊すことになったが、作中の出来事なので気にするほどのことではない。 「ロケットキャノン!」  正攻法で進んでも体力の無駄遣いでしかない。目的地のアルテミスは鎮座しているのだ。建物を砲撃した反動で直接、飛び込むのが一番、手っ取り早い移動手段である。  建物は破壊され、巨大な弧を描き飛んでいくキャロンを人々を驚いたように見届けるしかない。だが、向こうは黙って、アルテミスにキャロンを突入させようとはしない。  トコリコの記憶から色上良次の姿を模したX氏は同じく、彼の記憶から引っ張り出した虎子が持つ地鍵と同じ、魔法の鍵である色鍵を所持していた。 「異邦人め。来たか・・・」  屋上から向かってくるキャロンを見下ろす、X氏は解錠し絵筆の形に具現化した色鍵を振り回し色を周囲に張り巡らせた。その動きも、トコリコが見た色上の鍵を極めた証である極武装と全く同じだった。 「色極武装『色神転生』」  模した魔法の鍵とはいえ、その性能は本物と同じである。ただ一つ、違うのは魔法を使うのに必要な魔力を必要としないことだろうか。あくまで、体験者のトコリコ、彼の記憶を元にしているだけだから。魔力を必要としなかった。魔力を使わずに無尽蔵に魔法を模した力が使えるのは反則といってもいい。  無数の色が色上となったX氏を覆い、姿を変化させる。無数の色を身に纏った色を司る神にX氏は転生する。 「雷神の槍(ヴァイオレット・ランス)」  X氏は素手で空中に絵を描く、青紫色の円を。  丸く空中に青紫の円が描かれると、そこから雷を纏った巨大な槍が出現した。あまりに、巨大な槍は人の手で持つことはできない。いや、持たせる必要はなかった。元になった色上と同じように、X氏はそれをアルテミスに向かってくるキャロンに狙いを定めて落とすだけで良かったから。  X氏が弧を描きつつ、アルテミスに近づこうとするキャロンに指先を向ける。
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