3.X、Y、Z

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 瞬間、雷神の槍はその名が示す通り、雷の如くキャロンに向かい落ちていく。 「キャロン=狩音。海姫と呼ばれる戦士に変身する女」  X氏はトコリコの記憶から得たキャロンに関する情報を口にする。海姫と呼ばれる存在が、どれほどのものであるか。理解していないトコリコから得た情報なので、断片的なものしかなかったが、事前に知ることができる情報としては十分であった。  挨拶代わりに放たれた雷神の槍はキャロンの横を掠め、地上に突き刺さる。地面に雷神の槍が突き刺さると、周囲に稲妻を走らせ建物を跡形もなく消し去った。  雷神の槍を避けたキャロンは、そのまま、アルテミスの外装である窓硝子を突き破り、建物の中に侵入する。もっとも、外見はアルテミスに似せて創られた建物であるが、内部はそれとは異なる造りをしていた。 「ここって、あの建物と・・・?」  内部の構造、その一部はキャロンが知るものだ。少し前に訪れた積木のような建物が建ち並ぶ、ルビック国にあった古代遺跡の内装と似ていた。だが、それは一部にすぎない。それ以外は、キャロンが知らない造りである。巨大時計塔の雑居に楽園都市のインデックス。キャロンが仲間になる以前に、トコリコ達が訪れた国に存在していた建物をごちゃ混ぜにしたような構造を為していた。  少なくとも、このおかしな建物の構造は普通ではない。そして、普通ではない建物にはそれ相応の戦力が敷かれていた。  トコリコの記憶を読み取ったX氏は色鍵の力を使い、建物内に警護する兵隊を生み出していた。オリジナルであるX氏とは違い、模造して造られただけの連中には、意思というのがない。ただ、命じられるがままに動くだけの操り人形に過ぎない。とはいえ、戦力は本物に限りなく近く。呼び出された兵士の内、二人はメイド服を着ていた。無言のまま、一人は真っ赤に光り高熱を発する服にガンレット、ロングブーツを身につけていた。もう一人は獣のように姿を変え、口の中には銃器のようなものが見え隠れしていた。  これで、ごく一部の戦力なのだから笑うしかない。彼女達の背後には、トコリコが記憶した者達を模した偽者が待ち構えているのだから。それらを撃破して、屋上にいるX氏の元に辿り着かないといけない。
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