3.X、Y、Z

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 Z氏も読み取られたトコリコの記憶から強そうな奴を選んで再現していた。ただ、強いだけではダメ。自分達の目的を為すには、世界を造り替えられるほどの力をもった存在が必要だった。彼が目を付けたのは、トコリコがとある世界で出会った神と悪魔の力を融合させ自らを創造主と名乗った女の記憶であった。科学者、インストロ・Q(クイーン)・アストラが創造主として覚醒した姿を模した彼は、彼女の力を使い、フィルムの一部を好き勝手に変更していた。 「ったく、なんて場所に来てしまったのよ・・・。私、スプラッター系が苦手なのに」  ピースは泣きそうだった。海姫の世界で見た海物を模したのが相手であるなら、まだしも、その世界にいたのはゾンビ化した魔法使いもいた。全員、不気味な声を上げながら異物であるピースを襲撃していた。 「しかも、フィリドにいた魔女達に似た少女達もいるし・・・」  異世界を旅するトコリコだから似た人を知っていても不思議ではなかった。だが、それが、かつてピースが所属していた故郷の組織、フィリドにいた魔女の姿もある。非常に戦いにくい相手である。  こんなピースが苦手とする相手が大勢いるようなところで、安易に空を飛べば格好の的になることは目に見えていた。 「・・・!」  森を走るピースが振り返ると、後ろの方で魔法使いが杖を自分に向けているのに気付く。だが、ここは森の中だ。鬱蒼とした森の木々が邪魔をして狙いを定められないはずではないだろうか。 「いえ・・・。ここは・・・」  ピースは立ち止まると魔銃器の銃口を魔法使いに向ける。これは、攻撃用ではない。守りを固める為だ。 「“極光の空(オー・スカー)”」  ピースが前方に“オー・スカー”の魔法を込めた弾を撃ち出した。それが放たれたと、同時にピースを目隠し代わりをしていた森の木々が消えた。  どうやら、森自体が罠だったらしい。森のおかげで逃げ切れると思わせておきながら、その森を消し去り、控えていた魔法使いの攻撃によりトドメを刺すつもりだったのだろう。だが、その思惑はピースに見透かられていた。  ピースが自分の前に“オー・スカー”の魔法を展開して攻撃を防ぐ態勢をとった。重力を強引にねじ曲げる“極光(オー)”の魔法。この魔法は、対象の攻撃を下に落とすものではなく、その反対、上へと打ち上げる魔法であった。
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