3.X、Y、Z

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 念の為だ。森が消えた今となってはピースは敵の格好の的である。上空に控えている魔法使いの集団に狙われ兼ねない。  放たれた魔法は“オー・スカー”に命中すると、次々と空に打ち上げられた。そして、そられは、ピースの狙い通り、上空から彼女を狙っていた魔法使いを撃沈させる。 「それと、もう一つ」  ピースは敵の魔法を防ぎつつ、魔銃器の銃口を上へと向ける。彼女の頭上に敵はいない。いや、居なくても関係なかった。これでハッキリしたから。Z氏は自由に地形を変えることができるのだと。ならば、今自分が立っている場所。ここすらも、安全が保証された安全な場所ではないということになる。  安易に空を跳ぶことができないというのならば、戦いやすい場面を生み出すまでだ。 「“無の世界(ノッフィ)”」  魔銃器から放たれた魔法の弾は上空で発動すると、そこを中心として球体の無重力空間を生み出す。無重力空間であれば、地形による不利は少しは改善されるはず。  なにより、邪魔な雑魚を一掃するのにも適していた。 「“散りゆく欠片の雨(ピースフール)”」  無重力空間に自らの身体を浮かすと、ピースは更に魔法を使う。魔力がある限り連続して使えるのも魔銃器の良い点である。また、その魔銃器自体も改良されパワーアップしていた。魔力の弾を装填するまでのラグがほとんどない状態で使えた。  魔銃器の周囲に引力の点が幾つも生み出されると、その点に無重力空間となった場所に散らばっていた残骸が集約されていく。  “ピースフール”は何も生み出した破片を標的に向けて放つだけの攻撃ではない。応用次第でこういうこともできるのだ。集約され八つの破片が空間に生まれると、ピースはそれを周囲に向けて発散させた。邪魔な敵を一掃する為だ。普段はこのような使い方をしない。だが、ここはフィルムの中に造られた世界。そして、今、ピースを狙って攻撃を仕掛けているのは全て、Z氏によって生み出された偽者である。遠慮をする必要はない。  八つの破片が地上、空中にいる敵を一掃していく中、発生した欠片を集め更なる破片を量産していく。一度に操れる破片は八つまで。それ以上は、この魔法で操ることはできない。だが、操る必要はなかった。
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