4.自由を求めて

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「とりあえず、危ない武器を降ろしてもらえるか?もし、抵抗するようなら危険火器所持法違反で、お前を拘束しなくてはいけない」  事件が起こっているのはフィルムの中だけのこと。外の世界までに悪影響が及んではいない。今ならば、まだ彼らを止めることはできる。  だが、P博士は止まる気はなかった。 「悪いができない相談だ。私達はいい加減、架空の人間というのはやめたいんだ。言うならば、P博士という役を降りたい。その為には、一人間としての人格を得なくはならない。その為には、この革命は成功させなくてはならないのだよ」  P博士は役として生き続けたことに疲れきっていた。彼はクリティカの砲口をネロに向けた。彼には周囲に張り巡らされたロープが見えていないのだろうか。砲のようであるが、その程度の武器では弾は全てネロのロープに受け止められてしまう。  しかし、P博士は疲れてはいるが、目は生きていて、ネロを討ち取るのに迷いはなかった。 (そう言えば・・・)  ネロは以前、討師の国でトコリコがどうやって、〈スロク〉の最高幹部で紫彩コンシャスの攻撃を破ったのか。それを、ピースから聞かされた。  あの時、トコリコが使った銃の種類は----。 「・・・・」  嫌な予感がしてきた。 (ヤバイ!)  ネロはとっさに足場にしていたロープから飛び降りた。それと同時に、P博士はクリティカのレバーを引く。  瞬間、音もなく砲口から白い光線が放たれた。レーザーやビームでも打ち出す装置なのだろうか。違う。これは、それらの単純な光科学兵器とは次元が違うのだ。そもそも、光りですら、この光線を防ぐことすらできないのだ。  足場から飛び降りたネロは振り返り、光線が横切ったロープに目をやる。 「ロープが消えている」  ネロは天井から落ちてきたロープの切断面を見て呟いた。ロープは消えていた。比喩とかではなく、文字通り。  光線によってロープは焼き払われたのではない。焼かれたのならば、ロープの断面に焦げた跡が残っているはずだから。けれど、断面は綺麗に切断させていた。刃物よりも鋭いモノによって。いや、この場合でも『刃物』で切断されたという表現も間違いだ。
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