4.自由を求めて

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「まさか、そのクリティカという銃器は・・・」  ネロは確かめるようにクリティカを持つP博士に目をやると、持っていたナイフの一本を投げ付けてみる。P博士はそれにう答えるように、ナイフに向け光線を放った。  光線がナイフに命中すると、一瞬にしてナイフは消え去った。跡形も残さず。  間違いない。ネロが直感した嫌な予感が的中してしまった。 「気付いたか。これは、トコリコが最も厄介だと思っていたバラキヤが愛用していた銃器、クリティカを再現したモノだ。その性能は」 「あらゆる分子結合を分解する」 「その通り」  P博士はそう言って、クリティカを構えるとレバーを引き分子結合を分解する最悪の光線を撃ってきた。  トコリコがバラキヤを厄介な人間だと思っていた理由。それを、目の当たりにしてネロも理解した。どんな攻撃でも傷一つ、付くことがないトコリコの金環。それをもってしても、原子レベルで結合を分解してしまう反則的な銃器の光線ばかりは、どうすることもできない。身体も金環も分解されてしまえば、もう二度と元に戻ることはない。  光線が通り過ぎた後には、一瞬であるが真空が生まれネロも引き寄せられそうになる。クリティカの光線は空気中の分子結合ですら分解してしまう。常識外にも程がある。 「さすがの彼でも、バラキヤとだけは真っ向から戦う気はなかったようだ。私も光線は反則的だと思っているよ」 「そうだな。真っ向から戦っては、勝ち目はない。だが・・・」  ネロは光線を交わすと、次の光線が撃たれるまでラグを利用してP博士との間合いを詰める。分子結合分解銃クリティカも決して、万能ではない。分子結合分解という特殊な銃であるが故に、銃本体の大きさがあった。至近距離まで接近されると攻撃より内側になり命中させることは無理だ。 「ここまで、接近したらどうなる?」  ネロは間近まで迫るとロープを手にP博士を拘束しようとする。この距離なら、光線を浴びる心配などしなくてもいい。ところが、P博士はロープとナイフを見ても、少しも動じなかった。それどころか、ロープを見せられた時には羽織りの下から拳銃を抜き取りネロに突き付けた。
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