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「さあな。私に銃で撃たれるのではないか」
バラキヤの主力武器はクリティカであったが、それだけが彼の戦闘スタイルの全てではない。接近戦でも十分に戦えるだけの体術、射撃の腕前を兼ね備えていた。
「くっ!」
バラキヤは元軍人だ。その姿を模したP博士も同じだけの能力を有している。
先手を打たれたと思ったネロはナイフの峰で拳銃の銃口を自分から逸らさせると、後ろに飛び跳ね駆け出した。
得意とする距離を置いた戦法も接近戦も、その全てが悉く破られていく。どのみち、第三研究室は広すぎた。狭い場所での戦闘を得意とするネロにしてみれば、あまり有利な場所ではない。
ネロはそのまま、走り出すと扉を蹴破り、第三研究室から脱した。今は取り敢えず、身を隠しながら戦うしかない。狙いさえ定められなければ、光線を浴びる心配はないから。
「・・・逃げたか」
P博士はクリティカを構えるも、すぐに姿を眩ましたネロを見て呟いた。
「まあいいか。これを使って見たかった」
P博士は雑然とした作業台の上に置かれていた眼鏡ケースから一つ、眼鏡を取りだした。白縁の眼鏡で特に変わった様子はない。だが、これはP博士が造った発明品の一つ。いや、厳密には星村が作った話に登場したモノだ。
「女の裸を見たいというくだらない願望の為に作られた眼鏡。だが、それ以外に使えば、こんなにも役立つ道具はない」
P博士はモノを透視することができる眼鏡をかけると、周囲を見渡す。視界を遮る壁や資材がネロの姿を隠していたが、透視できる眼鏡をもってすれば、それらは彼にとって、何ら障害にはならない。一直線上に見たネロの姿を確認するとクリティカの照準を合わせ、レバーを引くだけでいいのだから。あとは、光線が一直線上に周囲のモノを消しながらネロがいるところまで、向かうだけであった。
虎子はシャベルに具現化した地鍵を手に荒廃した星の大地を走り回っていた。泥人形や宇宙人の軍勢に手を焼かされていたが、もっと、厄介な者が姿を現した。
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