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「どこに逃げる?」
虎子を追ってきたのは全身が光り輝く男、Y氏であった。Y氏はトコリコの記憶の中から、惑星Xと呼ばれる星にて戦った相手、星の記憶と呼ばれる膨大なエネルギーと一体化した男、パレスであった。星の記憶を体内に取り込んだことで、姿と力に変化が起こり星の代理人とも呼べる“星人”という存在に昇華させた。
星人パレスを模すY氏は彼が持つ膨大なエレルギーを使い虎子を追いかけていた。泥人形や宇宙人は全て、Y氏の支配下に置かれており、彼の思い通りに動かされていた。
虎子も好きで逃げているのではない。星の記憶とよう莫大な力を模したY氏と真っ正面から戦うのは危険だと思ってのこと。相手はエネルギーの固まりのようなものだ。なんの考えもなしに戦うことがもっとも、愚かな選択なのだ。虎子は走り回ることで、チャンスを待っていたがY氏にスキが出来ることはなかった。
「どうした。極武装は使わないのか?」
Y氏は虎子を追いかけ回しながら聞く。虎子の奥の手とも言うべき、地極武装『地龍偃武』。シャベルを龍の姿に変える究極の武装であるが、虎子は挑発に乗ろうとはしなかった。多くの魔力を消費する上、自分の居場所を教えるような極武装を安易には使えない。
「たっく、トッコったら、余計な情報を引き出されて・・・!」
虎子は湧き出る泥人形をシャベルで振り払いながら、愚痴を漏らす。
どう考えても、自分の方が不利であったからだ。虎子は“星人”についての満足な知識を持たないまま戦わされているというのに、相手はトコリコの記憶を元にしているとはいえ、自分達の情報を持ち、優位に戦っていた。
始めから分が悪すぎた。
「大人しく、記憶を私達に提供してくれたら解放するんだ」
Y氏は宇宙船の残骸に身を隠す虎子に迫りながら言う。彼らの目的は作者である星村からの解放。そして、あわよくは現実の世界とフィルムの世界にも侵攻しようと目論んでいた。それを、現実にする為には今は一つでも多くの記憶が必要であった。
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