4.自由を求めて

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 ここは星村が創り上げた世界。ならば、どこかに原作と使われたシナリオがあると思い探していたのだ。そして、それは幾つも見つかった。そして、その作品の中に今回の一件が書かれたのがあった。ただ、これは下書き程度のシナリオなかりで結末もなく、作品が作者に反乱を起こすというもの。  思い出してみれば、フィルムの内容がメチャクチャになったのは星村が数種類のフィルムを混合してしまったのが原因であった。ならば、その中に作りかけの作品が混じってしまっても何ら不思議な話ではない。  Y氏達は意識していないだけで、全て星村の作品通りに動かされていた。ただ、それが書きかけだったので結末もなく本筋だけが動き続けていた。 「ったく、あの無責任な館長は。現実に戻ったら賠償請求してやろうかしら・・・」  虎子は無責任な作者、星村を毒つきながらも書きかけのシナリオをジャージの中にしまった。おそらく、ここで原作をどうにかしても、あまり効果はないだろう。ここはフィルムという作品の中の世界。この世界で元になるシナリオを傷付けることは世界を壊すに等しい行為である。 「まあ、今は作品通りに動いている彼らをどうにかしないといけないんだけど・・・」  虎子は立ち上がると、近くに落ちていた宇宙船の残骸と思われるモノから長めパイプを持ち出した。地鍵に比べれば威力に乏しいが、今は贅沢は言っていられなかった。今は、早急にY氏を黙らせるのを優先する。 「わざわざ、姿を眩ましておきながら、自分から出てくるとは・・・。どういうつもりだ?」  Y氏は手を虎子の方に向けて聞く。この状況で、姿を現すことは、どれだけ無謀なのか分かっているのか。 「確かに、星一つの記憶を携えた力は本物をうまく模しているわ。本当にトッコはどういう奴らを相手にしてきたのよ」 「答えになってないようですが」 「まあ、いいわ。これ以上、ホッシーの作品に付き合う義理もないし。さっさと、決着をつけさせてもらいましょう」  虎子はそう言うと、宇宙船の残骸から回収してきたパイプを構えた。いつものシャベルの持ち方ではなく剣でも振るうかのように。  自分を無視する虎子にY氏は冷静さを装っていたが、怒りが滲み出ていた。元々、決まった性格は彼らにはなく、その口調、感情の突起もまちまちであり、何気ない一言で殺意を懐く時だってある。
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