4.自由を求めて

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 Y氏は星の記憶から力を凝縮し、光る剣を生み出す。虎子が持つ鉄パイプごと、彼女を両断するつもりでいた。 「私達は外を自分達の了解にする。その邪魔だてをするのならば・・・」 「いいから、かかってきなさいよ」  虎子はY氏を見下したように言い、彼を挑発する。  どのような策を虎子が考えているのか。Y氏は気にも止めなかった。彼女の実力の大半は地鍵によって、もたらされていた。その鍵を手放した今、パイプだけで何ができるというのか。そんなのは、その欺瞞に満ちた自信事、切り裂いてやるだけ。  Y氏は剣を大きく振り上げ、虎子にその刃を振り下ろす。トコリコを痛めつけた、あの光線で。 「なんてね」  パイプを剣のように構えていた虎子はニヤリと笑った。彼女は待っていた、Y氏が自分を殺そうと剣を大きく振り上げる、その瞬間を。瞬間を待ち、Y氏が攻撃を仕掛けてくるのを誘っていた。  虎子はパイプの持ち方を変えた。その持ち方はライフル銃を撃つ姿勢であった。ちょうど、ピースがいつも魔銃器を撃つ時に構えているように。 「“地亜棘(チアホーン)”」  剣を振り上げたY氏を狙って虎子はパイプから魔力を込めた弾を撃ち出した。ピースの重力魔法ではなく、『地』の属性を持った魔法の弾を。 「嘘だろう」  トコリコの記憶を元にしていたY氏は知らなかった。虎子が元いた世界で政府によって極秘に開発された生体兵器であることを。そして、与えられた力が『平均』であることを。なんでも平均的にこなすことができる虎子は当然のことながら、ピースの魔銃器を何度も見ていた。当然、その構造も教えてもらっていた。  完璧に魔銃器を再現することはできないが、まずまずの威力を持つ魔銃器を作ることができた。 「がは・・・」  打ち出された弾はY氏が模していたパレスの弱点でもあったエネルギーの大元であるある星の記憶の核を撃ち抜いた。模しているからには、必ずルールに従うしかない。星の記憶と融合した星人の唯一の弱点である核の消失はY氏の意識を奪うには十分すぎた。 「模倣した相手には模倣で十分なのよ」  虎子は一発撃っただけで、破損し使えなくなった魔銃器のモドキを捨てる。パレスの姿を模したY氏は変身が解け、元の姿に戻っていた。元の姿に戻っては、虎子に勝つ見込みは、もうない。
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