4.自由を求めて

11/17
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
 キャロンは放たれた黒鋼の矢(ブラック・アーロ)を蹴り上げ、それを退けた。だが、攻撃は一撃で収まらない。色上良次と彼の魔法の鍵、色鍵から色極武装『色神転生』したX氏は、次々と空中に黒い色で黒い矢を描くと、それをキャロンに向けて放ち続けた。  アルテミスに似た高層ビルを最上階、目指して敵を退けながら登っていたキャロンであったが、途中から登るのが面倒になってきた。どうして、敵が用意した舞台を目指して律儀に登らなくてはいけないのか。  そうしなくては、ならない理由は一つもなかった。それに、いち早く片づけて、ネロとのデートを再開するのが最優先事項であった。  だから、キャロンは途中で予定を変更した。  硝子張りの壁を蹴破り空中に飛び出すと、割った硝子の破片を起爆の元にし跳ね飛ぶと、アルテミスの壁に回し蹴りを入れた。ネロに買ってもらったロングブーツの御陰でケガなど気にすることなく。蹴りが命中したアルテミスは全体に衝撃が走り脆くも崩れだした。  アルテミスという拠点を失ったX氏は当然のことながら怒りに燃えた。  そのフィルムの世界に映し出されている色という色を奪い取ると、それらの色を武器としてキャロンを狙って攻撃を仕掛けてきた。  トコリコが色上と戦った時、彼は距離を置いての戦い方をしていた。しかし、X氏はトコリコの記憶をそのまま、模写しただけではなかった。色上が極武装により得た力を最大限にまで引き出すことで、戦いに挑んでいた。 「空色の盾(スカイブルー・シールド)」  放たれた黒鋼の矢を爆撃し叩き落としつつ、姿を露わにしたX氏に蹴りをたたみ掛けようとするキャロンの足をX氏は、空から抽出した空色で盾を描き上げ防ぐ。元々、何もない空中では爆発を引き起こすことはキャロンにはできない。その弱点を知り尽くした上でのX氏の策であった。変な話だが、持てるはずの盾は本質である空と同じ力を有しており、キャロンの大砲の足技はその一切を封じられた。  自分の攻撃が通用しないことにキャロンは驚き、次へと繋がる動きが遅くなってしまった。そこに尽かさず、X氏の猛攻が入る。 「灰色の鎖(グレイ・チェーン)」  コンクリートの瓦礫から抽出した灰色を使い空中にX氏は鎖を描く。描かれた鎖は次々と実体化しキャロンに絡みつくと、彼女を締め上げた。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!