4.自由を求めて

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「きゃ!」  キャロンが手足を振るい灰色の鎖を断とうとしたが、そうは、させまいと、鎖は彼女に触手のように巻き付くと、その先端を四方に伸ばし手足の動きを封じにかかった。 「蹴るモノがなくては、自慢の大砲の能力は使えないようだな」 「こんな鎖・・・!」  キャロンは手足をどうにかして動かそうとしていたが、ピンと張られた鎖は微動だにしなかった。それにこうも、密着されていては能力を発揮するのに必要な動作もとることができない。  トコリコの記憶から判断した自分の弱点。このような事態になるのだったら彼の前で能力を見せなければ良かったと、キャロンは後悔をした。 「私をどうするつもりなの?」 「別に何もしないさ。私達の現実世界への干渉。その邪魔だてをされないように、しばらく、動けなくなってもらうまでだ。私達の目的はあくまで、ここと現実。その二つの世界の立場を入れ替えるだけのこと。用が済み次第、君達は解放する予定だ。そんな険しい顔をするな。デートの邪魔をしたのは、悪いと思っている。だが、私達が現実を作品として扱えるようになった時、君の望みであるネロという若者との関係を幾らでも進展させてやろう。デートでも、結婚でも、それこそ、初夜でも何でも好きなことを叶えてやる。せめてもの、迷惑をかけたお詫びだ。だから、そこで大人しく拘束され・・・」 「・・・ふざけないでよ・・・」  キャロンはギロリとX氏を睨み付けた。その表情は険しく、怒りに満ちていた。 「何をそんなに怒っている。私達は君達の為に・・・」 「ふざけるなって言ってるでしょうが!」  キャロンは吠えるように怒鳴った。この街に響く程の大きな声で。  いったい、キャロンは何をそんなに起こっているのか、X氏には理解できなかった。 「どうして・・・?どうして、そんなに怒る!どんな恋愛も結婚生活も自由なんだぞ!望めば、叶えてやれる!神、いや、創造主にも等しい私達が!」 「大きなお世話よ!なに?デート?結婚?初体験?[ピ---]?人から与えられたモノで、この私が満足すると本気で思っているの?」  キャロンは両手両足に力を込め、どうにかして灰色の鎖を壊そうと試みようとする。 「愛っていうのはね、誰かに与えられるモノではないのよ!自分達で育むからこそ、価値があるのよ。与えられた愛なんて、私はいらない!私は・・・私は・・・」
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