4.自由を求めて

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(おかしい・・・)  X氏はあまりの静けさに妙な不安と懐きつつあった。あの爆発は、単なる目眩ましだったのか。それとも、爆発に巻き込まれキャロン自身も負傷してしまったのか。いや、それはない。だったら、意味ありげに出てきた錨のマークが施された板のような盾は何なのか。世の中に無意味なことなどない。全ては何かの為に存在している。  X氏達のように人に見られ楽しまれる道化師のような存在がいるように。 「アンカーキャノン!」  X氏がその言葉を耳にしたのは、キャロンに対する疑問を募らせていた時であった。  声は上空からではなく、生い茂らせた森の外側からだった。X氏が声のした方を振り向くと、森の木々を貫きながら、何かが自分の方に向かってきているのが見えた。  それは一瞬の出来事で、何であるのか判別することはできなかった。真っ赤に燃える何かの塊のように見えた。槍のように先端が尖っていた。それがX氏の身体を貫くと激しい爆発の衝撃を与えた。  真っ赤に燃えるそれは、森を貫通すると向こうで待機していたキャロンの願いにより生まれた盾の一つに命中した。盾は衝撃と爆発に耐え、撃たれたそれを内側に吸収する。盾に浮かび上がったのは、キャロンのシンボルでもある錨のマークであった。  一方、その盾とは一直線上の反対側で鎖を壊したキャロンは衣類を焦がしながら、立っていた。彼女の目の前には錨のマークが消えた盾がある。これが、キャロンの願いを聞き入れた装飾品の結果であった。  『護る』ことと愛を『貫く』こと。それを、聞き入れたから、このような盾が誕生してしまった。錨のマークが入った盾を蹴ると大砲の力が込められた貫通性のある錨のマークがもう一方の盾を目指して動くという護るはずの盾として、『矛盾(カントラディクト)』していた。 「貫らぬく・・・大砲だ・・んて・・・」  反則的な攻撃を仕掛けてきたキャロンにX氏は悶絶し文句を言うおうとしたが、言葉がうまく発せられなかった。今の一撃は相当効いたらしい。極武装をしていようと身体を爆撃が貫いたのだから。強化されていた分、死ぬことはない。いや、そもそも、彼らには死すらない。その話で死んだとしても、次の話で蘇るのだから。
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