4.自由を求めて

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「卑怯とか反則っていうの?そんなものでしょう。誰かを愛したからには、どんな手を使ってもそれを独占しようとする。それが、愛なのだから」  もうX氏はキャロンに言い返す気力もなく、色上良次の姿を時、元のX氏としての不安定な姿になると地面に伏せた。  Z氏はこの状況をどう説明したらいいのか分からず、口を閉じていた。一言で言えば、圧倒的だ。  トコリコの記憶からピースは何からのパワーアップをしていたことを知り、それなりに警戒していた。だが、この光景は反則としか言いようがなかった。フィルムの中に生み出した、星村の作品とトコリコの記憶にあった大型の敵を出現させたというのに、ピースは魔銃器の先に、それらを全てまとめ上げていたのだから。 「重力を操れるのだから重さなんて最初から関係ないわよ」  ピースにとって、Z氏のやったことはわざわざ、自分が攻撃に使用できるモノの数を増やしてくれたからに他ならない。重力を操作することで、出現させた全ての敵を一纏めにできた。そして、魔銃器に組み込まれたジャイロシステムの効果により、微妙な調整が効き、まとめ上げられたモノは槍の穂先のように形を整えられた。  ピースは魔銃器の先端に出来上がった穂先を軽々と動かすと、先端を地上に居たZ氏に狙いを定めた。 「“裁きの砲槍(ジャッランズ)”」  ピースが魔銃器の引鉄を引くと先端の穂先がZ氏に向かって動き出した。 「く!だが、それだって!私が生み出したモノ!消せないことはないわ!」  自分で生み出したのならば、消せばいいだけのことだ。杖を振り、自ら生み出したモノを全て消し去る。消し去っても、また生み出せばいいだけのこと。自分は、ここの創造主なのだ。どんなことだって、できる。その為に、この力を得たのだから。 「そうなるわね。避けきれないなら、消せばいいだけのこと」 「しまっ・・・!」  Z氏は硬直した。“ジャッランズ”に使われた材料を消すことに集中し、背後に回り込まれてしまった。 「抵抗しない方がいいわよ。ここが、いくら、あなたの思い通りなる世界でも至近距離からの魔法を防ぐ手段はないでしょう」  ピースは魔銃器の先端をZ氏の背中に押しつけて言う。背中に回り込まれては、ピースが言うように対処のしようがなかった。ただし、それは普通の人間ならばだ。
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