5.作家としてできること

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「やめておくんだな窓硝子は全て、特殊防弾で出来ている。過熱したところで壊れはしない」  逃げるネロを後から悠々とP博士が追いながら言う。そもそも、彼はネロ達がやってくることを知っていた。自前の発明品である未来を予測する機械がそう告げていたから。的中率100%を誇る機械である。なによりも信用することができた。だから、彼はクリティカの再現に尽力していた。この武器ならば、ネロ達と十分に渡り合えると考えた上で。 「無駄な抵抗をしないことだな。ロープやナイフだけでは私に勝つことなどできない。大人しく、これから先、私達が書く作品の一部になることだ」  P博士はそう言って、クリティカのレバーを引きネロに光線を放つ。ネロは吹きつけの空中廻廊を飛び交いながら光線を交わす。どんなものでも消し去ってしまう武器だ。少しでも触れたら最期だ。  光線を交わしたネロは廊下に着地すると、走り出す。P博士の言っていたことが、本当ならもう、どこにも逃げ場はない。 (どうしたらいい!防ぐ手もないあの光線を・・・!どうすれば・・・!)  追われる身となったネロは姿を眩ましつつ、自分を狙うことができるP博士に恐怖しつつ、同じ場所には留まらず逃げ続けるしかない。無様であろうと、死ぬよりはマシであった。だが、いつまでも、逃げ切れない。ネロは確実にP博士に追いつめられていた。  追いつめられ、追いつめられ、ネロはどこかの部屋に入っていた。第三研究室に比べ、随分と生臭い部屋だ。見渡してみると、いくつもの大きなカプセルが置かれていた。カプセルの中身は何かの液体で満たされていた。 「まさか、ここは・・・」  ネロがいつもあるカプセルを見渡していると、一番奥に一際、大きなカプセルを見つけた。人一人が悠々と入れる大きさのカプセルだ。実際、カプセルの中には人が入っていた。行方知れずになっていたトコリコだ。素っ裸のトコリコが溶液の中で眠らされていた。 「トコリコ!」  ネロは駆け寄り、カプセルを叩いたが、トコリコの反応はなかった。 「忘れたか?彼は今、私の治療を受けているんだ」  ネロを第二研究室まで追い込んだP博士はニヤニヤと笑みを浮かべながら言う。
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