5.作家としてできること

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 治療というのは名ばかり、拘束したトコリコから記憶を引き出し自分達の強化に当てていた。 「彼は素晴らしい人材だ。これまで、幾多という世界を渡り歩き、さらに強者に会ってきた。彼の記憶にはまだまだ、強い連中が大勢いる。外の世界を支配する為には、彼の記憶が、どうしても、必要なんだ」 「作者である星村の影響を受けないようにする為か」 「その通り。星村が、私達の計画を台無しにするような話を書いては、元の子もないからな。これは私達にとってチャンスなんだ。自由を掴む為のだから、もう余計なことはしないでくれないか」 「・・・いやだね」  ネロはトコリコが眠らされているカプセルに背を向け言う。追い込まれていると言うのに、ネロはさっきまでの恐怖を振り払っていた。彼にもまた、譲れないものがあるからだ。 「俺は世界を知りたくて、外に出た。今更、閉じ込められるなんて、イヤさ」 「ここで、死ぬことになったとしてもか?」  P博士はクリティカの照準をネロに合わせ聞く。 「死なねェよ。俺は・・・おい!トコリコ!」  ネロは眠らされているトコリコに語りかけた。その様子を見て、P博士は言う。 「無駄だ。トコリコは今、深い眠りについている。どんな手段を使っても起きることは、絶対にない」 「それは、どうかな?俺はトコリコとの付き合いは、虎子達よりは長いんだ。彼を叩き起こす方法は知っている」 「なに?」  P博士は意外そうな顔をした。トコリコを覚醒させる方法など、あるはずがない。溶液に浸かっている間はずっと、眠り続けている。容器を壊そうにも、窓硝子と同じでネロでは壊すことすらできない。 「トコリコ!お前なら、この研究所に置かれていた貴金属や宝石の塊であるデカイ装置のことを知っているよな」  ネロがトコリコに聞く。彼の言葉を聞いた時、僅かであるがトコリコの手がピクリを動く。それを見たP博士の表情が変わる。 「ま、まさか・・・!」  トコリコの記憶にないことは分からないままだ。だが、もう一つ、分からないこともあった。それは、トコリコ自身の性格である。彼がどんな性格をしているのか。P博士は分かっていなかった。
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