5.作家としてできること

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「やめ・・・!」  P博士は止めようとクリティカを向けるもレバーを引くことはできない。すぐにでも、ネロを光線で消し去ることはできる。だが、それをすれば、彼のすぐ後ろにいるトコリコをカプセルから出してしまうことになる。そうなれば、苦労して手に入れたトコリコの記憶が手に入らない。  P博士の制止を無視してネロはトコリコに言い続けた。 「あのデカイ装置、虎子が貰うつもりでいるようだ」 「・・・!」  ピクリと動いたトコリコ。そのカプセルに気泡が生まれた。装置から出た気泡ではない。トコリコの口から出された気泡である。 「虎子のことだから、きっと、敵を倒して今にも戻ってくるだろうな。まあ、虎子がP博士と契約したことだし、俺に止める権利はないが・・・」 「ふ・・・ざ・・け・・・」 「あ、ああ・・・!」  先程まで優勢でいたP博士は真っ青な顔になりカプセルの中で寝かされているはずの、トコリコを見る。トコリコは目を見開くと、右手を握り締めていた。右腕の腕輪が彼の力を増幅する。  命の首輪はトコリコの身体にとって『有害』なものを排除するが睡眠薬などには効果はなく、本来ならトコリコの意識はまだ眠っているはずだ。 「まさか、あの男!宝をとられたくない一心で眠ったままで・・・!」  目は開けているが、トコリコは眠っている。無意識での行動であった。力を増幅した右手を握り締めトコリコは拳をカプセルの硝子に叩き付ける。  一撃。特殊な防弾硝子で出来たカプセルは一撃で破壊された。  P博士は壊れたカプセルに目を奪われている間に、ネロは近くの洋服掛けにぶら下がっていたトコリコの下着、上着、ジャケット、ズボンを取ると、それらをトコリコに投げて渡す。  溶液が漏れ出す、カプセルからバケモノのように姿を現したトコリコは目をギラギラさせながら、唸るようにして声を出す。 「オレ様の宝を奪い取るバカは、どこのどいつだー!」  復活の第一声を上げると、トコリコは目の前にいたバラキヤの姿を模していたP博士に目をやった。 「バラキヤか?」 「あ、ああ。そうだとも、トコリコ。久し振りだな」  P博士はとっさに、バラキヤのフリをしてトコリコに接しようとした。彼が目覚めてしまったからには、仕方ない。再び昏倒させるのは無理だろう。これ以上、記憶を集められないからには、クリティカで殺すしか方法はない。
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