5.作家としてできること

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「・・・反射されただと?」  クリティカの光線は完璧に再現できていたはず。絶対に何も防ぐことはできない。なのに、たかが鏡に光線は反射された。いくら、光線を使っているとはいえ鏡で反射させることはできないはずだ。 「ミラーは対クリティカ用の弾だ。バラキアの武器は鏡だけは消し去ることができないんだ。反射してしまうから」 「バカな!そんな記憶、お前の中には・・・!」  なかった。クリティカの弱点など、トコリコの記憶には。 「ああ。ずいぶんと前のことだったから、忘れていた。ついさっきまで」 「え・・・?」  P博士は言葉を失った。忘れていた。そんなので弱点を自分に教えなかったというのか。 「さて・・・大分、頭がハッキリしてきた。確か、お前、暴れているY氏達を大人しくさせれば、宝を譲り渡してくれるとか言っていたな。意気揚々と出掛けようとしたら、おかしなガスを嗅がされて、そこから記憶がないんだが・・・。その姿といい、まさか、オレ様の記憶を無許可で搾取したんじゃないんだろうな」  トコリコは両手をポキポキと鳴らし、口元に笑みを浮かべながらP博士に詰め寄る。開発したばかりのクリティカはもう手元にはない。 「さーて、オレ様の記憶を見た代金を支払ってもらいますか?」 (悪魔だ・・・)  ネロの率直な感想だった。  トコリコは素っ裸のまま、笑みを浮かべて、右手でP博士に殴りかかった。 「・・・・」 「・・・・」  星村は困っていた。トコリコの仲間だというパラード・リー・ディルドを目の前にして。嗄れた声で短い自己紹介をされたが、それっきり、彼は黙ったまま、星村と対面した。お互い、相手を見つめたまま、微動だにせず無言の交流を続けていた。  息苦しさに映写室からホールに時折、視線を移しては星村はフィルムの中身が元に戻るのを待っていた。  トコリコに継いで、ネロ達が怪しい穴に飛び込んでから二時間は経過した。ネロ達と入れ違う形でパラードが戻ってきたから、二時間ほど無言の時間が続いていることになる。  星村はどうにかして話すキッカケを掴もうとしていた。だが、無口で顔が恐いパラードを目の前にすると、どうしても萎縮してしまう。
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