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満月 凛(みつき りん)たんの毎日はけっこうつらたん。
「アナタに抱かれても嬉しくなくなったから。……別れましょ」
それは少し前に凛たんが観た、映画のヒロインのセリフ。
不毛な関係を清算するため、ヒロイン自身が後戻りできないよう放った乱暴な言葉に彼女のハートはずぎゅん!
あまりのカッチョ良さにどうしても一度言ってみたくなり、それを目下の恋人に向かって実行したのだ。
イタリアンのお店で夕食を共にし、家まで送り届けてもらう途中の車中で。
「…………あぁ?」
そう一言漏らすと、彼氏はスイーッと駅のロータリーに車を回し……凛たんを外にぺいっと放り出した。
「やっ!? ちょ、冗談に決まってるやーん! ちょっと言ってみたかっただけで、ほらこの前同期のリカちゃんと観た映……!」
必死の弁明を試みる凛たんを置き去りに、車は華麗に走り去る。
呆然とした彼女のケイタイに彼氏からすぐメールが。
【おしおき。ここからは電車で帰りなさい】
……言ってみたかっただけなのに。
これも野望を叶えた代償と涙を飲んで、その夜は地下鉄に乗ってお家に帰った凛たん。
彼女の毎日は、そんなしょっぱくてつらたんなコトばかりだ。
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