葬哀

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 でもいつもちゃんと、仲直りするの。  おかしいよね?  あんなに喧嘩している間は、罵り合っていたのに。  けれど少しずつ心も身体も大人になって、私たちの間には見えない距離ができていった。  お互い同性の友達と一緒にいることが多くなったり、互いの異性を意識してしまって、ぎこちなくなったり。  そして、自分たちの力ではどうしようもない環境の変化は、それぞれの立場も変えてしまった。  貴方は街の代表で。  だから、あの娘と婚約しなくてはいけなくて。  そうしないと、街の皆が飢えてしまうから。  小さなこの街では、それはどうしようもないこと。  分かってる。  分かってるよ……。  だから、私は貴方の前から、消えるね。  この想いが貴方を苦しめてしまうのなら、私は……。  生きて、いられないから……。  ああ、どうか海よ。  私の最後の我儘を聞いて。  ずっと誰にも打ち明けられなかったこの想いを、ここで叫ばせて欲しい。  そしてどうかその音を、誰にも聞こえないように、包み込んで消してね。 ――本当は……本当はもっと、生きていたかった。  生きて、もっと色んなお話ができたら……。  もっと色んな貴方を見ていられたら、私は……。     
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