葬哀

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――本当は、いつまでもずっと、貴方の傍に居たかった!  お婆ちゃんになっても貴方の隣に居られたら、貴方が隣に居てくれたら、それだけで良かったのに。 ――その腕でもう一度、抱きしめて欲しかった……っ!  あの胸の高鳴りは、貴方の腕の中でだけ。 ――好きだよって、言って欲しかった……。  私を、選んで……くれていたら……。  特別じゃなくていい。  ただ普通な毎日を、一緒に過ごしていきたかった。  けれどもう、私は消えてしまうから。 ――さようなら。  大好き、でした……。  暗幕が落ちるように、瞳に映る世界は少しずつ暗くなって。  肺の空気はもう、一欠片も残ってはいない。  苦しいのだけれど、でもそれも忘れてしまえるほど、頭の中は真っ白に……。  この想いも、白く、白く消えていく……。  最後に浮かぶのは、やっぱり貴方の顔。  愛しい人よ……。 ――どうか、幸せに。  
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