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僕は空港でひとり、待合の座席でテレビを眺めながらたたずむ。
たぶん、田丸は手紙を読んで、捨てているだろう。
あんな女々しい手紙でよかったのか。いや、よかったのだ、これで。
これからのことを考えると不安も多い。が、また親愛なる誰かと出会い、信頼しあえる関係になり、田丸のことなど忘れてしまえばいい。自分に言い聞かせるように、ひとり頷く。
ふと、携帯の振動音が響き、電源を切り忘れたことに気づく。
「え」
その画面表示を見て僕は、出るべきか、そのまま無視すべきか、迷った。
でも気づいたらボタンを押してしまい、勢いで出る羽目になる。
「もしもーし」
そのヘラヘラした声は、今一番聞きたくなく、そして一番聞きたかった声だった。
<終>
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