2日目『11月7日(土)』

3/6
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/193ページ
 読みかけの小説を読むことにした。物語はそろそろ終盤へと近づいており、実は自分の傍にいた相棒が黒幕だったという事実に、主人公が戸惑いながらも銃を向けていた。  が、結局、その銃は撃たれることなく、相棒には逃げられてしまう。喪失した主人公が、たくさんの死体に囲まれたまま、そこに立ち尽くし続けて、その章は終わった。次が、物語の最終章だった。  夕方からは、段ボールを組み立て始めた。いくつもの引っ越し用の段ボールを組み立てていくが、蓑井からの返事が気になってしまい、途中、何度も手を止めてしまった。しかしそれでも、返事は来ず、姉や両親が帰って来る時間になっても、夕飯になり風呂の時間になっても、結局、返信はなかった。  それどころか、夕食を食べてからもう一度ツイッターを覗いてみると、あのツイートが消されていた。思わず、ガックリと肩を落とした。 (……幻かなにかだったのだろうか)  そんな考えまでもがぼんやりと浮かび始めたのは、風呂に入っているときだった。  それまで確実な証拠としてあった筈のものが消えてしまったからか、あまりにも現実味のないそれを受け入れ切れずにいた自分が、じわじわと思考の表面層に出てくる。  疲れているのかもしれない、と、口を湯船に沈めてぶくぶくと息を吐き出しながら考えた。     
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!