1日目『11月10日(火)』

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1日目『11月10日(火)』

「あら、おかえりなさい」 「ただいま……なんだ、姉貴、出掛けんの?」  時刻は夕方。  いつも通りに学校から帰宅すると、玄関で靴を履こうとしている姉と鉢合わせた。どこに行くのかと尋ねれば、友達と遊んでくるのよ、と返された。 「カラオケ行こうって話になってね。夕飯はそのまま皆と食べて来るから」 「……ふぅん」 「なに? 羨ましいの?」  なにをどう勘違いしたのか、姉がニヤニヤと笑いながら言ってきた。思わず、はぁ? と眉間にしわを寄せる。 「いいでしょー、可愛い女の子だらけの華々しいカラオケ大会。アンタじゃ、一生縁のないものでしょうね」 「うっせぇな。人の人間関係に首ツッコんで来るんじゃねぇよ」  つぅか、身内がいる時点で華々しさも一瞬にして散るわ。  俺の言葉に、まぁ、可愛げのない奴だこと、と姉がワザとらしく頬に手を当てながら呆れたような顔をする。が、その声音は明らかにニヤついており、眉間のしわが深くなった。 「全く。そんなんじゃ、いつまで経ってもモテないわよ? 生まれつき死んだ魚みたいな目つきしてんだから、性格だけでももっと明るくなりなさいよ」 「誰が死んだ魚だ」 「じゃあ、獲れたての魚」     
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