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「ねぇ、あの子達なんかおかしくない?」
M子の言う様に、確かに妙な違和感を感じます。
目です。
目が何というか、黒目がち過ぎると言うか……。
「……おい、アイツら目ん玉なくねぇか」
S君の発言に、私達は凍りつきました。
こちらを見ていると思っていた子供たちの目は、深くて暗い二つの孔だったのです。
「ギャアァァァァ━━━━━━ !!」
車内が絶叫に包まれたのは、彼らの眼孔の衝撃だけではありませんでした。
子供たちの数が、
四人、五人、六、七、八、九……
みるみる増えていったのです。
あっという間に前の車のリアウインドは、光を持たない瞳を持つ子供たちの姿で隙間も無いほど埋めつくされていきました。
「何アレ? おかしくない? どういう状況? どういう状況!?」
「ヤバイ。ヤバいって。逃げろ! あの車から逃げろ!」
皆に煽られて、S君がアクセルを踏み込みます。
スピードを上げ、車線を変えた私達の車が前の車を追い越す瞬間、
後部座席の子供たちの姿は、一瞬にしてかき消えてしまいました。
ハンドルを握っていたのは、疲れた顔をした若い女性。
自分が乗せている『モノ』に、彼女は気づいているようには見えませんでした。
小さくなっていく車のヘッドライトを見ながら、名前も知らない彼女の無事を祈りました。
── 彼女が背負っていたのは、一体何だったのでしょうか?
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