第5章 愛し子

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 言葉の最後に”多分”と付け足している事自体が”不安です”と言っているのと変わらないのに気付かない。  夜光の顔を見れば、こちらも”不安在()りまくりです”と言うような顔をしていた。  時雨はともかく、神に仕えている巴と夜光ですら信じないのはどうなのだろうか。  しかし、夜光達は知っている。  彼らの仕える神が、悪戯(いたずら)好きだという事を。  そして、今回もその可能性が高いという事を。  まぁ、悪戯(いたずら)好きと言っても、主に一人の神が、だが。  だが、この気まずい空気の中でそれを言えるほど、巴と夜光は馬鹿(ばか)ではない。  真実(しんじつ)を聞いた時雨が、(おこ)らない保証(ほしょう)はないのだ。  なぜこれ程までに彼らが時雨がキレるのを恐れているか。  それは、時雨がキレた時の恐ろしさを、身をもって知っているからである。  普段は怒る事のない時雨が怒った時は、トラウマ物だ。  『あ、あの、時雨様?』
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