第5章 愛し子

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 何時(いつ)までも黙ったままの時雨に、巴は(おそ)(おそ)る声を掛ける。  怒っていないかと心配なのだ。  しかし、そんな巴達の予想(よそう)を裏切った。  「?如何(どう)したんだ?巴、顔を真っ青にして。気分でも悪いのか?」  (うつむ)いていた顔を上げた時雨は、巴達の予想とは程遠(ほどとお)い顔をしていた。  寧ろ、本当に巴を心配している表情を浮かべていた。  その様子に、巴達は(そろ)って胸を撫で下ろした。  が、平穏(へいおん)がそんな長く続くわけも無く。  一人の来訪者(らいほうしゃ)によって、(なご)んだその空気は打ち崩された。
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