第5章 愛し子

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 二人揃って後ろに暗雲(あんうん)(ただよ)わせ始める。  (もっと)も二人の近くに居た時雨は、そんな二人の様子にいち早く気付き、()(あせ)を流し始める。  それでも口を(はさ)まないのは、自分が口を挟めば事はより面倒(めんどう)な事になると、(かん)が告げていたから。  (はた)から見れば非常に異様(いよう)な光景だろう。  だが、やはりと言うのだろうか。  何処(どこ)にでも、”空気の読めない(やつ)”と言う者がいるものだ。  そして、それは時雨達の前に居るこの男も例外(れいがい)ではなかったらしい。  巴達の()()えとした視線に気付くことなく、話し続ける。  「大体(だいたい)だなぁ、お前たちがさっさと天音(あまねさま)を連れて来ないのが悪いんだぞ?だからこの俺が()()かせて(むか)えに来てやったと言うのに、何だ、その顔は。俺は神だぞ?もっと(うやま)ってくれても良いんじゃないのか?」  ぺらぺらと男の口から出てくる言葉に、巴と夜光の周辺温度(しゅうへんおんど)が更に下がった。  最早(もはや)肌寒(はだざむ)いなんて言うものじゃない。
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