第5章 愛し子

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 絶対零度(ぜったいれいど)と言われても、時雨は信じるだろう。  それ程までに空気がひんやりとしていた。  (むし)ろ、(はだ)が痛い(くらい)だ。  しかし、当然(とうぜん)(ごと)く目の前の男はそれに気付かない。  仮にも神と言うのならば、気付いても良いのだはないだろうか。  神でこの鈍感(どんかん)さは頂けない、と思う時雨であった。  その後、(つい)我慢(がまん)ならなくなった(ともえ)夜光(やこう)に男はのされたのだった。  「ゴホン。えぇ、さっきは()まなかった。俺は、バッカス。酒と酒宴(さけうたげ)の神だ。知ってる奴は少ないだろうがな。久しぶりの異界だったのでつい、気分が高揚(こうよう)してしまってな。何時もの様に巴と夜光をからか・・・との再会を楽しんでいたのだよ。気にしないでくれ」  「『『・・・・・・』』」  今さり気無(げな)誤魔化(ごまか)したけど、確実に揶揄(からか)うって言いかけたよな・・・、と時雨は思う。  そして、巴と夜光をちらりと盗み見れば、笑顔ではあるものの、その蟀谷(こめかみ)にははっきりと血管(けっかん)が浮き出ていた。
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