第3章 異界

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 応えてくれた巴に礼を言って、滅多(めった)に笑わない時雨が微笑んだ。  人間界(にんげんかい)に居た時ですら人を魅了したその笑みは、神々しい姿によって倍増(ばいぞう)しされる。  天狐の長である巴ですら、魅了するほどに。  『っ!・・・私は神から(つか)わされた。貴方に(つか)える者。それともう一人・・・』  一瞬顔を朱色(しゅいろ)に染めながらも、さすがは天狐を(ひき)いる長。  瞬時に元の顔に戻し、別の事を話し始めた。  しかし、話は()らしたとはいえ、時雨に関することだ。  話していた言葉を一旦(いったん)切り、巴は何もない空間に目を向けた。  すると、巴が現れた時同様、風が渦巻き始める。  しかし、巴の頃よりは心なしか(おだ)やかで。  恐らく。  いや、かなりの確率(かくりつ)で、気のせいである。
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