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今までの会話でも、口調が崩れていることはあった。
それでも、直ぐに硬くなっていた為、時雨はずっと疑問だった。
どっちが素なのか。
『はい、そうですね。これが私の素です。今まで黙っていて、すみません。あ、あの。このことは・・・』
「大丈夫だ。誰かに言うつもりは無い。巴だって事情があるだろう。謝るなよ」
巴の言いたい事を汲み取り、時雨は返す。
その言葉に、巴は胸を撫で下ろす。
時雨の言う通り、巴は硬い言葉遣いを常に心掛けていた。
巴は、神の末席足る天狐の長。
長たるために、威厳を保つ必要があった。
普段は敬語で過ごしている巴も、言葉遣いを変える必要性に迫られた。
だから巴は、長に就任して以来、ずっとあの言葉遣いを続けていた。
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