第5章 愛し子

3/15
前へ
/106ページ
次へ
 この長い時間の中で、巴と夜光との会話の機会(きかい)も増え、友好的な関係を(きず)いていた。  対であった巴と夜光は、(たが)いにしか対等(たいとう)で話してくれる者がいなかった。  初めて対等で話してくれる時雨に、二人は安堵(あんど)ともいえる感情を(かか)えていた。  それだけ、嬉しかったのだ。  『はい、行く予定ですよ』  時雨の問いに、巴は笑顔で答えた。  最も変化が大きいのは夜光ではないだろうか、と巴は思う。  以前までの夜光ならば、口を開く事すら(かぞ)える程度(ていど)だった。  しかし、今では主に時雨限定(げんてい)だが、良く話すようになった。  思えば、夜光が初めて時雨と会った時から(すで)饒舌(じょうぜつ)だった気がしないでもないが、巴にしてみれば良い変化なのだろう。  だが、何も変わったのは夜光だけではない。  時雨もだが、巴も例外ではない。  (むし)ろ時雨はあまり変わっていない。  ()えて例を()げるなら、良く笑う様になった所だろうか。  それでも、時雨の根本的(こんぽんてき)な性格は変わらない。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

891人が本棚に入れています
本棚に追加