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10年近く前、あれは僕がまだ小学生だった時の話です 友人と自転車に乗り、少し遠くにある、しかし校区内にあった貝殻の形をした滑り台が特徴的な公園で遊んでいました 季節は夏 蝉の声が盆地特有の蒸し暑さを助長する様で、屋根のあるベンチに友達2人の間に座って近くの駄菓子屋で買ったラムネを飲みつつ駄弁りながら赤く染まり出した空を見上げて最近あまり雨が降らないなーなんて考えていると 急に蝉の声が止みました ハッとして辺りを見渡すとさっきまで入り口付近で屯していた同じ学校の男子生徒達がいつの間にか居なくなっていて、大通りもそこそこ近いはずなのに車の音も聞こえて来なくなり、夏の暑さから流すのとは違う嫌な汗が背中を滑り下りるような気がしました このままここにいるのはマズい 漠然とした危機感や不安感は僕だけでは無い様で、友人2人も僕の服の裾を掴んでキョロキョロと辺りを見渡していて それが更に僕の中の不安を煽っていたのだろうと思います 兎に角、ここから離れようと2人の手を引きベンチから立ち上がった瞬間 後ろからペタッと濡れた手を何かに押し付けた様な音がしました 僕は振り返らずに2人の手を引いて鍵をつけたままの自転車に走り出しましたが、右手側の少女、みっちゃんから劈く様な悲鳴が発せられ、思わず僕も左手側の少年けんちゃんも振り返ってしました
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