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背の丈は一メートル程。手足は猿の様に長く、頭に髪の毛は見当たらない。
そして座って動かない乗客の顔を覗き込み、キーキー声で何かを言っている。
ズズズッ……ズズズッ……
大鬼がその乗客の前までやって来ると片手で持ち上げた。
乗客はスーツ姿の三十代か四十代。人形の様に身じろぎ一つせずになすがままだった。
大鬼は乱暴に男を箱の中へと投げ込み、箱の中へ片手を差し入れると体重をかけた。
グチャ
学は呻き声が出そうになるのを必死で堪えた。
二匹の鬼は他の乗客の前へと移動をし始め、学は視線をそらし、寝た振りをする。
また小鬼の甲高い声と何かが潰れる不快な音が聞こえてくる。
学は恐る恐る、もう一度二匹の鬼達を盗み見る。
鬼達は乗客の顔を一人一人覗き、小鬼が何か言うとその乗客を箱に放り込んでいった。
そして、一番大事な事は着実に学の方へと近付いている事。
学はぎゅっと目をつぶり、体の震えを押さえ付けながら祈った。
『頼む……来ないで……来ないでくれ……』
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