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目は瞑れても耳を塞ぐ事は出来ない。もし塞いでいるのが奴等にバレたらどうなる事か。
だからどうしても聞こえてくる。
鉄の箱とあの甲高い声が徐々に近付いてくるのが。
そして音はピタリと止まった。
今度は静寂が学の不安を煽る。
『何だ……何が起こってるんだ……』
学は不安に堪えられなくなり、そっと目を開ける。
目の前に小鬼の顔があった。
目は猫の様な楕円。瞳は燃えているかの様に赤く煌めく。
鼻は申し訳程度、それとは逆に口は大きく、耳まで裂けている。
「コイツは違うぞッ! コイツは違うッ!」
小鬼の叫びに学は思わずシートに張り付く。
大鬼が学の方へと一歩踏み出す。
大鬼の顔は一言で簡単に言い表せた。牛だ。
縮れた白髪から角と鼻を突き出し、奥の方から赤い瞳が学を捉えていた。
「構うもんかッ! コイツも連れてけッ! ちょいと早いだけだッ! キキキキキッ!」
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