第1章

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 目は瞑れても耳を塞ぐ事は出来ない。もし塞いでいるのが奴等にバレたらどうなる事か。  だからどうしても聞こえてくる。  鉄の箱とあの甲高い声が徐々に近付いてくるのが。  そして音はピタリと止まった。  今度は静寂が学の不安を煽る。 『何だ……何が起こってるんだ……』  学は不安に堪えられなくなり、そっと目を開ける。  目の前に小鬼の顔があった。  目は猫の様な楕円。瞳は燃えているかの様に赤く煌めく。  鼻は申し訳程度、それとは逆に口は大きく、耳まで裂けている。 「コイツは違うぞッ! コイツは違うッ!」  小鬼の叫びに学は思わずシートに張り付く。  大鬼が学の方へと一歩踏み出す。  大鬼の顔は一言で簡単に言い表せた。牛だ。  縮れた白髪から角と鼻を突き出し、奥の方から赤い瞳が学を捉えていた。 「構うもんかッ! コイツも連れてけッ! ちょいと早いだけだッ! キキキキキッ!」
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