第1章

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 目は猫の様な楕円。瞳は燃えているかの様に赤く煌めく。  鼻は申し訳程度、それとは逆に口は大きく、耳まで裂けている。  折角封印した記憶の権現が目の前に居た。 「ホラ言っただろう! チョイと早いだけだってなッ!」  学は叫び声をあげようとしてもそれは叶わなかった。 「地獄行きッ! お前は地獄行きだッ!」  学の体を大鬼が掴み、持ち上げる。  学の体は木偶人形の様に抵抗一つ出来ず鉄の箱へと放り込まれる。  ドロドロしたものが学の体へまとわりつく。  それは以前人だったモノ。人の姿はしていなくとも、人の意識があった。  悲しみ、絶望、恐怖。そんな負の感情がジワリジワリと学の中へと浸食してくる。  大鬼の大きな手が学の体に影を落とす。  グヂャ  学の個は消え、渦巻く感情の一つとなった。  それは正に地獄と呼ぶのに相応しかった。
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